最近よく耳にするようになったテレワークという言葉。
言葉自体はよく聞くけど、具体的に何ができるのかわからない方も多いのではないでしょうか。
筆者はいくつかの企業様に向け、テレワーク環境の構築をお手伝いさせて頂いています。
主にMicrosoft365環境の構築と、仮想デスクトップ環境の構築を担当しています。
業務上習得した知識をシェアできればと思います。
今回はテレワークの概要について簡単にまとめます。本記事は以下のような方を対象としています。
- テレワークの概要について知りたい
- テレワークを実現するために必要な環境について知りたい
- テレワークでできること・できないことを知りたい
テレワークの概要
テレワークとは
テレワークとは、遠隔地を意味する”Tele”と、仕事を意味する”Work”を組み合わせた造語です。
意味としてはそのままで、遠隔地で仕事をすることを表しています。
クラウドやSaaS等のITツールを活用した、時間や場所にとらわれない、柔軟な働き方を指します。
日本のテレワーク導入状況
日本企業のテレワーク導入率の推移については、以下二つの文書から読み取ることができます。
- 「多様な働き方に関する実態調査(テレワーク)結果報告書」※2020年3月東京都公表
- 「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査結果」※2020年6月内閣府発表
上記から、日本企業のテレワーク導入率推移は以下のようになっています。
年 | 導入率 |
2017年 | 6.8% |
2018年 | 19.2% |
2019年 | 25.1% |
2020年 | 34.6% |
テレワークの導入率は年々導入率が増加していることがわかりますね。
新型コロナウイルス感染症の流行もあり、2020年はかなりの増加率を示しています。
最近筆者の周囲でもテレワークの環境構築に関する案件が非常に多くなってきており、テレワークが浸透してきているのを実感しています。
このテレワーク拡大の流れは今後も続くことが予想されます。
テレワークのメリット
テレワークにはメリットが非常に多いため、取り入れない企業は今後淘汰されていく可能性が高いです。
テレワークのメリットをいくつか紹介します。
優秀な人材を確保できる
2020年現在、ITの現場では人材不足が深刻化しています。
特に若い方はプライベートを重視し、柔軟な働き方を望む傾向にあります。
テレワークであれば時間や場所にとらわれずに働くことができるため、優秀な人材を確保しやすいと言えるでしょう。
離職を防ぐことができる
近年は高齢化が進み、離職を余儀なくされるケースも増えています。
筆者の周囲でも、動けなくなった両親の介護のため離職していった元同僚が何人かいます。
また、首都圏では幼稚園・保育園の不足も深刻化しています。
子供が入園できなかった場合、育児のため離職を選んでしまうケースもあるでしょう。
テレワークなら自宅で仕事ができるため、上記のようなケースによる優秀な人材の離職を防ぐことができます。
経費が削減できる
会社全体にテレワークを導入する場合、毎日の出勤が不要となります。
定期代の支給が不要となり、従業員数が多いほど大きな経費削減が可能です。
上記に加え、大きなオフィスが不要となります。
最小限の本社機能だけを残す形で小さなオフィスに移転すれば、かなりの経費削減となります。
また、テレワークでは紙文化が廃止され、事務手続きのほとんどは電子化されます。
これにより、印刷用紙やトナー等の事務用品の使用量が低下し、経費が削減できます。
事業継続性の向上
一般的な働き方の場合、災害や感染症の拡大時には通勤が困難となります。
結果として事業の継続ができなくなることが多くなります。
テレワークであれば通勤が不要なので、デバイスや通信インフラが利用可能であれば事業を継続することができます。
※通信インフラが使えないほどの大災害の場合、無理に出勤しても業務にならないでしょう。
2020年は新型コロナウイルス拡大に伴う緊急事態宣言が発令されました。
出社を7割軽減するようお達しが出たため、事業の継続に苦労した企業も多いのではないでしょうか。
特に2020年のテレワーク拡大は、事業継続性の向上を目的としたところが大きいと思われます。
テレワークのデメリット
テレワークにはいくつかデメリットがあります。
そのほとんどはITツールやルールで解消可能ですが、中には解消が難しいものもあります。
テレワークのデメリットをいくつか紹介します。
コミュニケーションが取りづらい
会社で顔を合わせれば自然と取れていたコミュニケーションが、テレワークに移行したら難しくなったという話をよく聞きます。
コミュニケーションが取れないことによる不安・孤立感を感じる方が非常に多いそうです。
報告・連絡・相談が疎かになり、業務の質が低下することも予想されます。
ルールの制定や、会議ツールの導入によるコミュニケーション障壁の排除が重要となります。
作業実態の把握が難しい
リモートワークでは従業員がそれぞれ遠隔地で業務を行うため、作業実態の把握が難しくなります。
中にはサボりだす従業員が出てきますが、ずっとカメラで監視するのもナンセンスです。
作業状況を分析するITツールも存在するので、利用を検討しましょう。
作業実態が正しく把握できない場合、従業員の評価が難しくなります。
評価制度を成果主義に変更してしまうというのも一つの手です。
在宅勤務に伴うコストが発生
通常の勤務であれば日中はオフィスで過ごしますが、在宅勤務の場合は日中を家で過ごすことになります。つまりエアコン・パソコン・照明等、これまで会社が負担していた電気代が、従業員にのしかかる形になるわけです。
このコストを従業員負担のままにすると、いずれ従業員から不満が出てくることでしょう。
通勤が不要になるわけですから、定期代の支給を廃止して在宅勤務手当の支給を行う等の対応を取るべきでしょう。
家族へのストレス
2020年の緊急事態宣言の中、在宅勤務になる男性が増えました。
この時、少なからぬ奥様方がストレスを感じていたそうです。
旦那様は仕事をしなければならないので、その分の家事(食事の準備・掃除)が増えたり、一人だけの時間の確保がしづらくなったことが大きな原因です。
テレワークのデメリットの中で、解消が一番難しいのがこの問題です。
会社としてとれる対応はサテライトオフィスの設置等が考えられますが、費用が掛かってしまいます。
在宅勤務という働き方が受け入れられるのを待つしかないのかもしれません・・・。
テレワークでできること
テレワークの対象業務は非常に広範です。
物理的なオペレーションを伴わないほとんどの業務を行うことができます。
- 事務作業
- 会議
- 開発業務
- etc…
最近では便利なITツールが日々登場してきており、それに従ってテレワークの対象業務も拡大しています。
テレワークでできないこと
裏返しに、物理的なオペレーションを伴う業務は行うことができません。
- 機器電源の落とし上げ
施設の鍵の開閉 - etc…
業界にもよりますが、工夫次第ではこれらの業務自体をなくすことが可能です。
例えばサーバーの類は全てパブリッククラウドに移行してしまえば電源の落とし上げはリモートで完結します。
テレワークを実現するために必要な環境
実際にテレワークを導入するには、様々な環境整備が必要です。
無償で用意できるものもありますが、大半は費用が掛かります。
デバイス
パソコンやタブレット等、業務を行うためのデバイスが必要です。
社外との通話業務がある場合、携帯電話の支給も検討します。
リモートワークを行う従業員全員分のデバイスを用意する必要があり、非常にコストがかかります。
故障時に備え、余分なデバイスを準備しておく必要もあるでしょう。
従業員が自身のデバイスを使用する、BYOD(Bring Your Own Device)という方式もあります。
BYODの場合はコストを抑えることが可能です。
ただしデバイス制御の範囲に限界があるため、情報流出等に備えたセキュリティ面での考慮が必要となります。
通信設備
テレワークはインターネット越しに行われるため、通信設備が必要不可欠です。
従業員の自宅に高速インターネット回線があれば、それを利用してもらうのが一般的です。
注意点としては、ビデオ会議を行う場合回線帯域が細いと使い物になりません。
インターネット回線がない従業員・回線帯域が細い従業員に対してはポケットWi-Fiを支給する等の対応が必要となります。
この場合イニシャルコストに加えてランニングコストが発生します。
自前の回線を利用する従業員に対しては在宅手当を上乗せすると、不公平感が軽減されます。
ITツール
通常勤務時にできていた業務をリモートワークで行うため、様々なITツールを活用します。
リモートワークに必要なITツールは、Microsoft365やG Suite等の総合ツールに含まれているものを使うことが多いです。
よく導入されるITツールについて解説します。
メール
社内の従業員や、社外の取引先と連絡を取るために必須です。
Microsoft365(ExchangeOnline)やG Suite(Gmail)を採用する企業が多いように感じます。
チャット
メールをするほどでもない、ちょっとした会話をする場合に使用します。
1:1だけでなく多:多で利用できるものが便利です。
会話のログも残るため、後で見直すことができます。
有名どころではMicrosoft Teams、Slack、Chatwork等が挙げられます。
ビデオ会議
社内のミーティングや、取引先との商談に使用します。
ビデオ会議を行う場合、デバイスにマイク・カメラが付いていることが前提となるので注意です。
ビデオ会議ができない場合、会議のためだけに出勤するという事態になりかねません。
リモートワーク成功の肝となるので、ビデオ会議はぜひ取り入れましょう。
Zoom、WebEX、Google Meet、Microsoft Teamsあたりが有名です。
ファイル共有
共同で作業を行うにあたり、ファイル共有は欠かせません。
オフィス内であればファイルサーバーをしますが、リモートワークではファイル共有機能のあるクラウドストレージを使用することが多いです。
ファイル共有ツールとしては、Box、DropBox、Googleドライブ、OneDrive等が挙げられます。
スケジュール管理
自身のスケジュール管理に加え、チームメイトのスケジュールを把握するために使用します。
Microsoft365の予定表、Googleカレンダーを使用することが多いように感じます。
経費精算
経費申請を紙の申請書提出により行っている企業も多いかと思います。
経理部門のテレワークを推進するには、紙文化からの脱却が必要です。
経費精算ツールの導入の導入により、経費処理をリモートで行うことが可能になります。
経費精算ツールとしては、楽楽精算、マネーフォワード クラウド経費、ジョブカン経費精算が挙げられます。
セキュリティ
業務がオフィス内で完結している場合と比較し、リモートワークの場合にはセキュリティの確保が課題となります。
テレワークの環境整備で最も難しいのがセキュリティ対策でしょう。
マルウェア対策
デバイスのマルウェア感染対策として、ウィルス対策ソフトの導入が必須となります。
Windows Pro以上であればDefenderを使うと経費が削減できます。
情報流出対策
テレワークではオフィスの外で業務を行うため、これまで以上の情報流出への対策が必要となります。
デバイスの紛失・盗難への対策
テレワークで最も懸念される情報流出のケースとして、デバイスの紛失・盗難が挙げられます。
仮にデバイスが盗難に遭っても情報が流出しないように対策が必要です。
対策としては以下が挙げられます。
- ディスクを暗号化する
- 遠隔でのデータ消去が可能なデバイス管理機能を導入する
- シンクライアントを採用し、デバイスにデータを保存させない
- 仮想デスクトップを導入し、デバイスへのデータコピーを制限する
過失・故意による情報流出への対策
メール誤送信による情報流出もよく耳にします。
悪意のある従業員が故意に情報を持ち出すという事件も近年発生しています。
このような情報流出に対応したソリューションとして、Azure Information Protection(AIP)が挙げられます。
AIPでは、ファイルに対していつ・誰が・何をしたかを追跡することができます。
流出後のファイルに対して参照を制限することも可能できるので、情報流出への強い武器となるでしょう。
まとめ
今回は「テレワーク(リモートワーク)とは?導入に必要な環境整備について解説」という内容でお伝えしました。
最後に記事の内容をまとめます。
- テレワークはすさまじい勢いで拡大しており、これまでの働き方は前世代のものとなりつつある
- テレワークの導入は、企業の魅力の一つとしてアピールポイントになる
- 現行のコストを大幅に削減できるが、新たに発生するコストもある
- 適用できない業務もある
- ただし、新たなITツールの出現により今後適用できる可能性がある
- テレワークを実現するには、様々なITツールを組み合わせる
- セキュリティの確保が非常に難しい
今後、各項目について詳細な記事も書いていこうと思います。
この記事の内容が皆様のお役に立てば幸いです。