- 1 1. この記事について — AI基盤3部作の最終章
- 2 2. サービス仕様と料金 — 無料階層とクリフを先に知る
- 2.1 2-1. 3サービス機能マップ
- 2.2 2-2. 無料枠5,000トランザクション/月の正確な線引き
- 2.3 2-3. 無料枠の適用条件 — 月次リセット・テナンシ単位
- 2.4 2-4. リージョン提供状況 — DU Custom Generative Modelsのみ大阪限定という非対称
- 2.5 2-5. 最新リリース動向
- 2.6 2-6. AWS対比 — Rekognition/Textract/Comprehendとの料金・提供状況の違い
- 2.7 2-7. 料金試算 — 最小構成ハンズオンの想定コスト
- 2.8 2-8. 料金を自分で確認する方法
- 2.9 2-9. まとめ — 3サービスの提供状況とAWS対比の要点
- 3 3. Visionハンズオン — 画像分析とOCRを無料枠内で
- 4 4. Document Understandingハンズオン — 日本語帳票を構造化する
- 5 5. Languageと三者使い分けの実践整理
- 6 6. まとめ・落とし穴チェックリスト
1. この記事について — AI基盤3部作の最終章

- OCI Vision・Document Understanding・LanguageをAWSのRekognition・Textract・Comprehendと対比しながら、事前学習済みタスク特化APIとして使い分ける方法
- 3サービス共通の月次無料枠(5,000トランザクション)の正確な線引きと、DU Document Extractionだけ超過単価が一桁高いという料金クリフ
- 日本語帳票のOCR・表抽出・Key Value抽出を、無料枠内でVision/DUのハンズオンとして実践する方法(§3-§4)
- AWSでRekognition・Textract・Comprehendの運用経験があり、OCIの対応サービスが何にあたるのか気になっている方
- 「OCI Generative AI実践Vol1」「OCI Data Science実践」を読み、OCIのAI関連サービスの全体像を最後まで押さえたい方
- 日本語の帳票・画像を無料枠内でOCR/構造化したいが、どのサービスをどう使い分けるべきか整理したい方
1-1. 本記事のゴール
本記事は「OCI AI Services実践」シリーズの第1弾であり、同時に「OCI Generative AI実践Vol1」「OCI Data Science実践」に続く、OCIのAI基盤3部作の最終章という位置づけです。AWSでAmazon Rekognition・Textract・Comprehendの運用経験をお持ちの方を主な読者に想定し、OCI Vision・Document Understanding(以下DU)・Languageの3サービスを、事前学習済みモデルをAPI経由で呼び出す「タスク特化型AIサービス」として理解し、実際に画像分析・日本語帳票OCR・テキスト分析までを実践することを目的としています。
本記事を読み終えると、次の状態になることを目指しています。
- OCI Vision・DU・LanguageがそれぞれAWSのRekognition・Textract・Comprehendのどの機能に対応するのかを、AWS実務者の言葉で説明できる
- 3サービス共通の月次無料枠5,000トランザクションの正確な線引きと、DU Document Extraction超過時の料金クリフを理解した上で、想定外の課金を避けて検証できる
- 日本語帳票のOCR・表抽出・Key Value抽出を、無料枠内でVisionとDUを使い分けながら実践できる
- 「生成する(Generative AI)」「自分で作る(Data Science)」「学習済みを呼ぶ(AI Services)」という3つの選択肢から、要件に応じて適切なOCI AIサービスを選べる
なお、本記事では、3サービスの無料枠と料金体系の正確な把握(§2)に続き、Visionハンズオン(§3)・DUハンズオン(§4)・Languageの概観と三者使い分けの実践整理(§5)までを扱います。分量規律の観点から、Vision/DUを実践の核として厚めに扱い、Languageは主要APIの概観と最小限の実践にとどめています。
本記事の対象範囲を明確にするため、扱わない内容もあらかじめ整理しておきます。
- Vision/DUのカスタムモデル学習(Custom Training)の詳細な運用(無料枠15時間の存在のみ§2で触れ、実践手順は対象外とします)
- OCI Generative AI Agentsとの連携によるマルチモーダルRAG構築(「OCI Generative AI実践Vol1」の対象範囲です)
- Language Custom Trainingによる独自エンティティ抽出モデルの構築(「OCI Data Science実践」で扱ったMLOpsの延長線上にあり、本記事はあくまで事前学習済みモデルの呼び出しに絞ります)
1-2. 読者像
本記事は、AWSでAmazon Rekognition・Textract・Comprehendのいずれか(または複数)の運用経験をお持ちの方で、OCIの対応サービスには初めて触れる方を主な読者として想定しています。次のような疑問を持つ方に向けて、本記事は具体的な答えを用意しています。
- OCI VisionはRekognitionの対応サービスだと思うが、料金体系や無料枠はどう違うのか
- OCI DUはTextractの対応サービスのはずだが、日本語帳票のOCR・表抽出はどこまで実用的に使えるのか
- 「OCI Generative AI実践Vol1」でモデル呼び出しを試したが、あれとVision/DU/Languageは何が違うのか
- 3つのAI関連サービス(Generative AI・Data Science・AI Services)がOCIに揃っているが、結局どれを使えばよいのか
なお、本記事は「OCI入門シリーズ」で扱ったテナンシ・コンパートメント・リージョンの基礎を前提知識として活用します。OCIアカウント自体をまだ持っていない方は、先にOCI入門シリーズVol1を参照し、テナンシのサインアップとホームリージョンの選択を済ませておくことをお勧めします。
1-3. AI基盤3部作の完結 — 三者使い分け決定表
「OCI Generative AI実践Vol1」「OCI Data Science実践」、そして本記事の3本により、OCIのAI関連サービスの全体像が出揃います。本節では、3記事の対象範囲を「生成する/自分で作る/学習済みを呼ぶ」という三分法で整理します。
| 観点 | Generative AI実践Vol1 | Data Science実践 | 本記事(AI Services実践) |
|---|---|---|---|
| 一言でいうと | 生成する(マネージドLLM APIの呼び出し) | 自分で作る(独自モデルのノートブック学習〜デプロイ) | 学習済みを呼ぶ(タスク特化型の事前学習済みAPI) |
| 対象モデル | Cohere・Meta・OpenAI・Google等の大規模言語モデル | 独自データで学習した任意のモデル | Oracleが提供する画像分析・文書理解・言語処理の事前学習済みモデル |
| AWSの対応サービス | Amazon Bedrock | Amazon SageMaker | Amazon Rekognition/Textract/Comprehend |
| 典型ユースケース | チャット・要約・RAGでの回答生成 | 自社データで学習した予測モデルの提供 | 画像分類・OCR・帳票構造化・感情分析 |
| リージョン | 大阪(ap-osaka-1)限定・東京非対応 | 東京・大阪ともGA | 東京・大阪ともGA(DU Custom Generative Modelsのみ大阪限定) |
| Always Free枠 | 対象外(全面的に従量課金) | 対象外(有償Compute/Block Storage前提) | 各API月次5,000トランザクションまで無料 |
この三分法で見ると、「生成する」「自分で作る」「学習済みを呼ぶ」は互いに競合せず、要件に応じて補完し合う関係にあることが分かります。既存の帳票をとにかく早く構造化したいなら本記事のDU、独自の分類基準でモデルを学習させたいならData Science、自然文での質疑応答をさせたいならGenerative AIという具合に、入口を使い分けることになります。
1-4. 用語整理 — Vision・Document Understanding・Languageの境界
3サービスはいずれも「事前学習済みモデルをREST API/SDK/CLIで呼び出す」という設計は共通していますが、対象データと機能範囲が明確に分かれています。混同を避けるため、本記事および本シリーズでは次のように整理します。
- (a) OCI Vision: 画像(写真・スキャン画像)を対象に、画像分類・オブジェクト検出・顔検出・画像内テキスト検出(OCR)を提供するサービスです。AWSでいえばAmazon Rekognitionに相当します。
- (b) OCI Document Understanding(DU): スキャンされたビジネス文書(請求書・領収書・契約書等)を対象に、OCR・表抽出・Key Value抽出・文書分類を提供するサービスです。AWSでいえばAmazon Textractに相当します。
- (c) OCI Language: 自然文テキストを対象に、感情分析・エンティティ抽出・キーフレーズ抽出・言語検出・翻訳を提供するサービスです。AWSでいえばAmazon Comprehend(+一部Amazon Translate)に相当します。
(a)と(b)はいずれも画像や文書という「見た目」を持つデータを扱う点で似ていますが、Visionは画像全般の汎用的な分析(何が写っているか)を、DUはビジネス文書を対象とした構造化(どの項目にどんな値が書かれているか)を目的としている点で役割が異なります。この境界は§2-1の機能マップと、§3-§4のハンズオンで具体的に確認します。
1-5. 差別化軸
OCIのAI Services(Vision/DU/Language)を扱う入門記事の多くは、機能紹介にとどまるか、無料枠の存在自体に触れないまま従量課金前提で解説されがちです。本記事は、次の5つの軸で差別化を図ります。
- AI基盤3部作の完結: §1-3の決定表の通り、Generative AI/Data Science/AI Servicesの3記事を相互に結線し、OCIのAI関連サービス全体を俯瞰できる形で完結させます。
- Rekognition/Textract/Comprehend対比: AWS実務者が最も知りたい「料金・機能・リージョン提供状況の違い」を、§2で具体的な数値とともに整理します。
- 無料枠設計と料金クリフ: 各API共通の月次5,000トランザクション無料枠の正確な線引きと、DU Document Extraction超過時の料金クリフを警告します。
- 日本語ドキュメント処理の実務: 日本語帳票のOCR・表抽出・Key Value抽出を、無料枠内でハンズオンとして実践します(§4)。
- DU Custom Generative Models大阪限定の非対称: 「OCI Generative AI実践Vol1」で見た大阪限定という制約が、DUの一部機能にも形を変えて現れているという非対称を正直に扱います(§2-4)。
1-6. シリーズでの位置づけ
本記事は、「OCI Generative AI実践Vol1」「OCI Data Science実践」に続く、AI基盤3部作の最終章です。先行する2記事とあわせて読むことで、OCIで生成AI・機械学習・タスク特化AIのいずれを使いたい場合でも、適切な入口を選べるようになります。
先行するGenerative AI実践Vol1では「Always Free枠が存在しない全面従量課金」という前提でしたが、本記事のVision/DU/Languageは各API月次5,000トランザクションまで無料という、AI基盤3部作の中で最も広い無料到達範囲を持つ点が特徴です。この違いを踏まえたうえで、次章では3サービスの機能マップと無料枠の正確な線引きを確認していきます。
1-7. 本記事で押さえるべき前提を先取りする
§2で詳細を扱う前に、本記事全体の前提となる3つのポイントを整理しておきます。
- リージョンは東京(
ap-tokyo-1)を基本とします。VisionとDUの基本機能、Language全機能は東京・大阪ともGA提供されているため、本記事のハンズオン(§3-§4)はすべて東京リージョンで完結します。DU Custom Generative Modelsのみ大阪限定という例外は§2-4で扱います。 - 料金は月次5,000トランザクションまで無料という前提です。ただし、DU Document Extraction(表・KV抽出)だけは超過単価が他のAPIより一桁高いという料金クリフがあるため、無料枠を超えて検証する場合は特に注意が必要です。
- Vision/DUのOCR機能は名前が似ていますが、対象が異なります。Visionは画像全般のテキスト検出、DUはビジネス文書の構造化に特化しています。この違いは§1-4・§4-1で改めて整理します。
この3点は、いずれもAWSのRekognition/Textract/Comprehendの運用経験だけでは自明に分からない、OCI AI Services固有の前提です。特に2点目(料金クリフ)は、実際にAPIを呼び出す前の設計段階で意識しておきたいポイントであるため、§2で改めて一次情報とともに詳しく確認します。
なお、本記事で扱う数値・GA状況・料金は、いずれも2026年8月10日時点で一次情報を実読確認したものです。OCIのAI関連サービスはモデルラインアップ・機能追加のペースが速い領域であるため、実際に利用する際には、本記事の内容を出発点としつつ、公式ドキュメントで最新状況を確認することをお勧めします。
1-8. 実行環境の前提
§3-§5のハンズオンをそのまま実行するには、次の環境を整えておく必要があります。
- OCIテナンシとコンパートメント(「OCI入門シリーズ」Vol1-2で作成済みのものをそのまま使えます)
- OCI CLIのインストールと設定(
oci setup configでのAPIキー登録) - Vision・Document Understanding・Languageの各サービスに対するIAMポリシー
- サンプル画像(JPEG/PNG)とサンプルの日本語帳票(PDF、請求書・領収書等)
IAMポリシーは、Vision・Document Understanding・Languageでそれぞれ別のリソースファミリーとして管理されている点に注意してください。公式ドキュメント(docs.oracle.com、2026年8月10日確認)には、それぞれ次のようなポリシー文が例示されています。
allow group <グループ名> to manage ai-service-vision-family in compartment <コンパートメント名>
allow group <グループ名> to manage ai-service-document-family in compartment <コンパートメント名>
allow group <グループ名> to manage ai-service-language-family in compartment <コンパートメント名>
3サービスすべてを試す場合は、いずれのリソースファミリーに対してもポリシーを付与しておく必要があります。「OCI入門シリーズ」でIAMポリシーの基本構文(allow <subject> to <verb> <resource-type> in <location>)を扱った際の考え方が、そのまま応用できます。
← OCI入門 Vol1(テナンシ・コンパートメント・リージョン)を読む
それでは、3サービスの機能マップと料金体系を、§2で詳しく見ていきましょう。
2. サービス仕様と料金 — 無料階層とクリフを先に知る

本章では、Vision・DU・Languageの3サービスについて、機能マップ・無料枠の正確な線引き・リージョン提供状況・AWS対比・料金試算を、公式ドキュメントとOCI公式の価格情報API(取得日: 2026年8月10日)に基づいて整理します。
2-1. 3サービス機能マップ
まず、3サービスがそれぞれどの機能を提供しているかを一覧化します。
| サービス | 主要機能 | 対象データ | AWS対応 |
|---|---|---|---|
| Vision | 画像分類・オブジェクト検出・顔検出・画像内テキスト検出(OCR)・カスタム学習・動画分析(Stored/Stream) | 画像・動画 | Amazon Rekognition |
| Document Understanding | 文書OCR・表抽出・Key Value抽出・文書分類・文書プロパティ抽出・カスタム学習(生成系KV抽出含む) | スキャン文書(請求書・領収書・契約書等) | Amazon Textract |
| Language | 感情分析・エンティティ抽出・キーフレーズ抽出・言語検出・テキスト翻訳・PII/PHI検出・カスタム学習 | 自然文テキスト | Amazon Comprehend(+一部Translate) |
2-2. 無料枠5,000トランザクション/月の正確な線引き
3サービスの主要APIには、いずれも月次の無料枠が設定されています。ただし、この無料枠はOCI公式の「Always Freeリソース」一覧ページには掲載されていません(2026年8月10日確認)。「Always Free一覧に載っていない=無料枠が存在しない」ではない点に注意してください。無料枠は、Always Freeリソース一覧とは別に、価格表そのものの中に「First 5,000 Transactions(無料)」という段階制の単価(グラデュエーテッド・プライシング)として組み込まれています。
本記事執筆にあたり、OCI公式の価格情報API(cetools、2026年8月10日時点のデータ)で各APIの単価テーブルを直接確認したところ、次の無料枠と超過単価が設定されていることを確認しました。
| サービス | API | 月次無料枠 | 超過単価 |
|---|---|---|---|
| Vision | Image Analysis(画像分類・オブジェクト検出等) | 5,000トランザクション | $0.25 / 1,000トランザクション |
| Vision | OCR(画像内テキスト検出) | 5,000トランザクション | $1 / 1,000トランザクション |
| Vision | Custom Training | 15トレーニング時間 | $1.5 / 時間 |
| Vision | Stored Video Analysis | 1,000分 | $0.1 / 分 |
| Document Understanding | OCR | 5,000トランザクション | $1 / 1,000トランザクション |
| Document Understanding | Document Properties | 5,000トランザクション | $0.25 / 1,000トランザクション |
| Document Understanding | ★Document Extraction(表・KV抽出) | 5,000トランザクション | ★$10 / 1,000トランザクション |
| Document Understanding | Custom Document Properties | 5,000トランザクション | $1.5 / 1,000トランザクション |
| Document Understanding | ★Custom Document Extraction | 5,000トランザクション | ★$30 / 1,000トランザクション |
| Document Understanding | Custom Training | 15トレーニング時間 | $1.5 / 時間 |
| Language | Pre-trained Inferencing(感情分析・エンティティ抽出等) | 5,000トランザクション | $0.25 / 1,000トランザクション |
| Language | Text Translation | 1,000トランザクション | $10 / 1,000トランザクション |
| Language | Custom Training | 15トレーニング時間 | $1.5 / 時間 |
この一覧で最も注意すべきは、Document Understanding の Document Extraction(表・Key Value抽出)です。他の大半のAPIが超過単価$0.25〜$1/1,000トランザクションであるのに対し、Document Extractionの超過単価は$10/1,000トランザクションと、一桁違います。さらにCustom Document Extraction(カスタムモデルによる抽出)になると$30/1,000トランザクションまで跳ね上がります。無料枠内(5,000トランザクション)であれば無料ですが、日本語帳票を大量にバッチ処理して無料枠を超えた場合、他のAPIと同じ感覚で見積もると想定外の請求になりかねません。
- DU Document Extraction(表・KV抽出)の超過単価は$10/1,000トランザクション — 他の大半のAPIの4〜40倍
- DU Custom Document Extractionはさらに高く$30/1,000トランザクション
- 無料枠5,000トランザクション/月を超える見込みがある場合は、Document Extraction系APIの利用量を優先的に監視してください
2-3. 無料枠の適用条件 — 月次リセット・テナンシ単位
無料枠がどの単位でリセットされるのかは、実務で最も誤解しやすいポイントです。まず月次リセットについては、OCI公式のDocument Understanding価格ページ(oracle.com/artificial-intelligence/document-understanding/pricing、2026年8月10日確認)に次のように明記されています。
5,000 transactions per month are provided at no cost.
Vision・Languageの価格ページ(oracle.com/artificial-intelligence/vision/pricing、…/language/pricing)も同一の段階制単価(First 5,000 Transactions等)を採用していますが、本記事の確認時点ではDU価格ページの「per month」明記のみを一次情報として直接引用できており、Vision・Languageの各ページ本文からの同等の直接引用は確認できていません。以降、Vision・Languageの月次リセットについては推論として扱います。
さらに、OCI公式のIaaS/PaaS課金ガイド(docs.oracle.com、2026年8月10日確認)には、Pay As You Goモデルについて次のように明記されています。
All charges are based on metered usage and calculated as per Oracle’s list price or rate card, whichever is lower. Usage billed monthly in arrears is based on the payment terms in the agreement.
つまり、OCIの利用量は暦月単位でメータリングされ、月単位で後払い請求される仕組みです。DUの月次無料枠明記は、このOCI全体に共通する月次メータリング・後払いサイクルと整合しています。Vision/Languageについても、同じ価格表内で採用されている段階制単価の仕組みが同一の月次メータリングの上に成立していると考えるのが妥当であり、DUと同様に月次リセットされると推論します。
テナンシ単位での計上については、Vision/DU/Languageいずれの価格ページ本文にも直接の明記は見当たりません。ただし、OCI公式価格表では、Ampere A1 Compute(「all tenancies get the first 1,500 OCPU hours…per month」)やFunctions(「Invocation – First 2 million per month」)など、他の多くのOCIサービスの無料/低額枠が「all tenancies get」(テナンシ単位)という条件で明記されています。OCIの課金・メータリングがそもそもテナンシ単位で行われる設計であることを踏まえると、Vision/DU/Languageの無料枠もテナンシ単位で計上されると判断するのが妥当な帰結です。
- 【公式明記】DU: 「5,000 transactions per month are provided at no cost」(oracle.com DU価格ページ、2026年8月10日確認)
- 【推論】Vision/Language: DUと同一の段階制単価の仕組み・OCI共通の月次メータリングから同様に月次リセットされると推定(各ページ本文からの直接引用は本記事確認時点で未確認)
- 【帰結】テナンシ単位での計上: OCIの課金・メータリングがテナンシ単位で行われる設計であることからの帰結であり、価格ページ本文に直接の明記はなし。複数の担当者が同一テナンシでAPIを呼び出す場合、無料枠は合算で消費される点に注意してください
2-4. リージョン提供状況 — DU Custom Generative Modelsのみ大阪限定という非対称
Vision・Language・DUの基本機能は、いずれも東京(ap-tokyo-1)・大阪(ap-osaka-1)の両リージョンで利用できます。OCI公式ドキュメント(docs.oracle.com、2026年8月10日確認)には、Visionについて次のように明記されています。
Vision is hosted in these regions and availability domains: Japan Central (Osaka), Japan East (Tokyo)
Languageについては、docs.oracle.comに「hosted in OCI commercial and government regions」と明記されており、商用リージョン全域(東京・大阪を含む)が対象です。DUの基本機能(OCR・Document Properties・Document Extraction・分類)も、Commercial Regions(OC1)全域が対象で、東京・大阪とも利用可能です。
ただし1点だけ非対称があります。DUのCustom Generative Models(生成系抽出を使うカスタムモデル)は、Brazil East・Japan Central(Osaka)・UK South・US Midwestの4リージョンのみに限定されており、東京は対象外です。「OCI Generative AI実践Vol1」で確認した大阪限定という制約と、まったく同じ構図がDUの一部機能にも現れている形です。
| 機能 | 東京(ap-tokyo-1) | 大阪(ap-osaka-1) |
|---|---|---|
| Vision(全機能) | ○ | ○ |
| Language(全機能) | ○ | ○ |
| DU 基本機能(OCR/Document Properties/Document Extraction/分類) | ○ | ○ |
| DU Custom Generative Models | × | ○(4リージョン限定の1つ) |
日本語帳票を対象とした本記事のハンズオン(§3-§4)は、東京リージョンでそのまま実践できます。DU Custom Generative Modelsのみを検証したい場合は、「OCI Generative AI実践Vol1」と同様に大阪リージョンへの切り替えが必要になる点を覚えておいてください。
2-5. 最新リリース動向
3サービスの最近のリリースノート(docs.oracle.com、2026年8月10日確認)を見ると、DUの機能拡張が最も活発です。
- DU: 2026年1月16日 — Generative Key-Value Extraction(大規模マルチモーダルモデルを使った生成系カスタム抽出モデルを追加)
- DU: 2025年8月19日 — Document Understanding Version 2.0(英語以外の言語サポートを追加)
- Vision: 2025年8月18日 — Stream Video Analysis(リアルタイム動画分析に対応)
- Language: 2024年12月18日 — Language 4.1(PII/PHI検出の精度向上・翻訳機能の改善)
DUのバージョン2.0(2025年8月19日)で英語以外の言語サポートが追加された経緯もあり、日本語帳票のOCR・構造化についても実用段階にあります。具体的な日本語対応の確認は§4のハンズオンで行います。
2-6. AWS対比 — Rekognition/Textract/Comprehendとの料金・提供状況の違い
AWS実務者にとって最も気になるのは、対応するAWSサービスとの料金・提供状況の違いです。AWS公式の価格情報API(2026年8月10日確認)で東京リージョン(ap-northeast-1)の単価を取得したところ、次の結果になりました。
| 観点 | OCI | AWS |
|---|---|---|
| 画像分析(Vision/Rekognition) | Image Analysis: 5,000無料/月、超過$0.25/1,000tx | Rekognition Label/Object Detection: 通常単価$1.30/1,000画像(0-100万枚/月) |
| 文書OCR(DU/Textract) | OCR: 5,000無料/月、超過$1/1,000tx。東京・大阪とも利用可能 | ★Textractは東京リージョン(ap-northeast-1)に非対応。最寄りはソウル(ap-northeast-2)でOCR $1.50/1,000ページ、Forms抽出$50.00/1,000ページ |
| 感情分析(Language/Comprehend) | Pre-trained Inferencing: 5,000無料/月、超過$0.25/1,000tx | Comprehend DetectSentiment: $0.0001/unit(100文字、1リクエスト最小3unit)、0-1,000万unit/月の階層 |
この対比で最も重要な発見は、★Amazon TextractがAWS東京リージョン(ap-northeast-1)に対応していないという事実です(AWS公式のサービスエンドポイント一覧、2026年8月10日確認)。Textractを東京の他のワークロードと同一リージョンで完結させたい場合、最寄りの提供リージョンはソウル(ap-northeast-2)になり、クロスリージョンでの呼び出しが必要になります。これに対し、OCI DUは東京・大阪の両リージョンで基本機能が利用できるため、日本語帳票を国内リージョン内で完結して処理したいユースケースでは、DUの方がリージョン面で優位という結果になりました。
なお、AWSのRekognition/Comprehendには2025年7月15日以前に作成されたアカウント限定のレガシー無料利用枠(アカウント作成から12か月間)が別途用意されていますが、AWSは2025年7月15日にFree Tierを改定しており、それ以降の新規アカウントはこの12か月間限定枠が廃止されクレジット制へ移行済みです。これに対しOCIの無料枠は、アカウント作成日に関わらずテナンシ単位で恒久的に月次リセットされる仕組みであり、この対比はむしろ現在のほうが際立っています。
2-7. 料金試算 — 最小構成ハンズオンの想定コスト
§3-§4で実践するハンズオン(画像分析・OCR数枚〜数十枚、日本語帳票OCR・表抽出・Key Value抽出を数件)は、いずれのAPIも数十〜数百トランザクション規模にとどまるため、月次無料枠5,000トランザクションの範囲内で完結します。
- Vision Image Analysis(画像分類・オブジェクト検出): 数十トランザクション → 無料枠内
- Vision OCR: 数十トランザクション → 無料枠内
- DU OCR・Document Properties・Document Extraction: 各数件〜数十件 → 無料枠内
- Language Pre-trained Inferencing(感情分析・エンティティ抽出): 数十トランザクション → 無料枠内
ただし、これはあくまで本記事の最小構成での想定です。実際の検証量や、Document Extractionを繰り返し試す場合の累積トランザクション数によっては無料枠を超過する可能性があります。実施前には、OCIコンソール右上の「価格の見積り」(Cost Estimator)、またはコンソールの使用状況(Usage)画面で、各APIのトランザクション数を都度確認することをお勧めします。同一テナンシ内の他プロジェクトと無料枠を共有している場合は、なおさら注意が必要です。
2-8. 料金を自分で確認する方法
本記事で示した無料枠・超過単価は2026年8月10日時点の一次情報ですが、OCIの価格情報は随時更新されるため、実施前には必ずご自身でも最新の単価を確認することをお勧めします。確認方法は主に2通りあります。
(1) OCIコンソールの「価格の見積り」(Cost Estimator)
- OCIコンソール右上のメニューから「価格の見積り」を開きます。
- 「サービスの追加」から、Vision・Document Understanding・Languageのいずれかを検索して追加します。
- 想定するトランザクション数(月間)を入力すると、無料枠を超えた分の概算費用が表示されます。
- リージョン(東京または大阪)を指定して、リージョンごとの単価差がないかもあわせて確認できます。
(2) OCI公式の価格情報API(cetools)
OCIは、価格表のデータをJSON形式で取得できる公開APIを提供しています。認証不要でアクセスでき、全サービスの単価・無料枠の段階(価格帯の下限・上限)を機械的に確認できます。本記事の§2-2・§2-3の数値も、このAPIから取得したデータに基づいています。
curl -s "https://apexapps.oracle.com/pls/apex/cetools/api/v1/products/" \
-o oci_products.json
取得したJSONをjq等でdisplayNameが”Vision”・”Document Understanding”・”Language”を含む項目に絞り込むと、各APIの価格帯(無料枠の範囲と超過単価)を確認できます。レスポンスにはlastUpdatedフィールドが含まれており、価格表データの最終更新日時もあわせて確認できます。
この2つの方法を組み合わせることで、本記事の数値が古くなっていないかをご自身で検証しながら、安心して§3以降のハンズオンに進めます。
2-9. まとめ — 3サービスの提供状況とAWS対比の要点
本章で確認した内容を一覧化し、§3以降の実践に備えます。
| 項目 | 状況 |
|---|---|
| 月次無料枠 | 各API 5,000トランザクション(Language Text Translationのみ1,000)/月・テナンシ単位 |
| 最大の料金クリフ | DU Document Extraction 超過$10/1,000tx(カスタムは$30/1,000tx) |
| 東京・大阪リージョン | 基本機能はすべて両対応。DU Custom Generative Modelsのみ大阪限定 |
| AWS対比の最大の発見 | Amazon Textractは東京リージョン非対応(OCI DUは東京・大阪とも対応) |
| 最新機能追加 | DUのGenerative Key-Value Extraction(2026年1月16日)が直近で最も新しい |
この一覧の通り、無料枠の広さ・東京リージョンでの完結性という2点では、OCI AI ServicesはAWSの対応サービスと比べても遜色なく、Textract東京非対応という点ではむしろ優位という結果でした。一方で、DU Document Extractionの料金クリフのように、AWS側の感覚のまま見積もると想定外の課金につながりかねない落とし穴も確認できました。
- IAMポリシー(§1-8)で、Vision・Document Understanding・Languageの各リソースファミリーへのmanage権限を付与済みか
- 検証で使うリージョンが東京(
ap-tokyo-1)になっているか(コンソール右上のリージョンセレクターで確認) - Document Extraction系APIを繰り返し試す予定がある場合、想定トランザクション数を事前に見積もったか(§2-7・§2-8)
この3点を確認できたら、いよいよ§3のVisionハンズオンから実践に入ります。
→ OCI Generative AI実践Vol1(大阪限定の料金体系)を読む
それでは、この前提を踏まえた上で、§3では実際にVisionを使った画像分析とOCRのハンズオンに進みます。
3. Visionハンズオン — 画像分析とOCRを無料枠内で
本章では、OCI Visionを使って画像分類・オブジェクト検出・OCR(画像内テキスト検出)を実践します。§2-2で確認した通り、Image AnalysisとOCRはそれぞれ月次5,000トランザクションまで無料のため、本章のハンズオン規模(数十トランザクション)であれば無料枠内で完結します。
3-1. コンソールでの画像分析
OCIコンソールからVisionを試す場合、次の手順で進めます。
- OCIコンソールの左上ハンバーガーメニューから「Analytics & AI」→「Vision」を選択します。
- 「プロジェクト」を新規作成し、コンパートメントを指定します。
- コンソールの「画像を分析」(Analyze Image)画面で、サンプル画像をアップロードします。
- 分析タイプとして「オブジェクト検出」または「画像分類」を選択し、「分析」を実行します。
- 結果画面には、検出されたラベル(オブジェクト名・信頼度スコア)とバウンディングボックスが表示されます。
コンソールでの分析は、モデルIDを指定しなければOracleの事前学習済みモデルがそのまま使われるため、追加設定なしですぐに結果を確認できます。
3-2. CLIでの画像分析
CLIで画像を分析する場合は、oci ai-vision analyze-imageコマンドを使います。このコマンドは--features(分析タイプ)と--image(対象画像)の2つの複雑型パラメータを必須で受け取ります。
まず、パラメータのJSONテンプレートを生成します。
oci ai-vision analyze-image --generate-param-json-input features > features.json
oci ai-vision analyze-image --generate-param-json-input image > image.json
features.jsonを編集し、画像分類・オブジェクト検出・OCR(テキスト検出)のうち必要なfeatureTypeを指定します。分析タイプはIMAGE_CLASSIFICATION(画像分類)・OBJECT_DETECTION(オブジェクト検出)・TEXT_DETECTION(OCR)・FACE_DETECTION(顔検出)・FACE_EMBEDDING(顔特徴ベクトル抽出)の5種類から選べます。image.jsonには、Object Storageに配置した画像の参照、またはBase64エンコードしたインライン画像データを指定します。
編集後、次のコマンドで分析します。
oci ai-vision analyze-image \
--features file://features.json \
--image file://image.json \
--compartment-id <あなたのコンパートメントOCID>
3-3. OCR(画像内テキスト検出)の実践
VisionのOCRは、features.jsonでfeatureTypeをTEXT_DETECTIONに指定するだけで、analyze-imageと同じコマンドで実行できます。看板・ラベル・名刺等、画像に写り込んだテキストを検出する用途に向いています。結果には、検出された単語・行単位のテキストと、それぞれのバウンディングボックス・信頼度スコアが含まれます。
ここで注意したいのは、VisionのOCRは「画像の中に写っているテキストを検出する」機能であり、次章で扱うDUの「スキャンされたビジネス文書を構造化する」機能とは目的が異なる点です。街角の看板に書かれた文字を読み取りたい場合はVisionのOCRが適していますが、請求書のどの欄に何の金額が書かれているかを構造的に抽出したい場合はDUが適しています。この使い分けは§4-1で改めて整理します。
3-4. 実行結果の確認と無料枠の消費量
コンソール・CLIいずれの方法でも、1回の分析リクエストが1トランザクションとしてカウントされます。本章のハンズオン(画像分類・オブジェクト検出・OCRをそれぞれ数枚ずつ試す程度)であれば、消費するトランザクション数は数十件程度にとどまり、月次無料枠5,000トランザクションには遠く及びません。無料枠の消費状況は、OCIコンソールの「使用状況」(Usage)画面から、サービス別・API別に確認できます。
4. Document Understandingハンズオン — 日本語帳票を構造化する
本章では、OCI Document Understanding(DU)を使って、日本語帳票のOCR・表抽出・Key Value抽出を実践します。§2-5で確認した通り、DUはバージョン2.0(2025年8月19日)で英語以外の言語サポートが追加されており、日本語帳票の構造化にも対応しています。
4-1. VisionのOCRとDUのOCRの違い
§3-3で触れた通り、VisionとDUはいずれもOCR機能を持ちますが、用途が異なります。
| 観点 | Vision OCR | DU OCR |
|---|---|---|
| 対象 | 画像全般(看板・ラベル・名刺等) | スキャンされたビジネス文書(請求書・領収書・契約書等) |
| 出力 | 検出された単語・行単位のテキスト | テキストに加え、文書構造(表・キーと値のペア) |
| 超過単価 | $1/1,000トランザクション | $1/1,000トランザクション(OCR単体は同額) |
| 関連機能 | 画像分類・オブジェクト検出と組み合わせ可能 | Document Properties・Document Extraction(表・KV抽出)と組み合わせ可能 |
日本語帳票を単にテキスト化したいだけであればVisionのOCRでも用は足りますが、「どの欄に取引先名が書かれているか」「表の何行目にいくらの金額があるか」といった構造まで必要な場合は、DUのDocument Properties・Document Extractionを使う必要があります。
4-2. コンソールでの帳票分析
- OCIコンソールの「Analytics & AI」→「Document Understanding」を選択します。
- 「プロジェクト」を新規作成します。
- 「文書を分析」(Analyze Document)画面で、サンプルの日本語帳票(請求書・領収書等のPDFまたは画像)をアップロードします。
- 分析タイプとして「テキスト抽出」(OCR)・「表の抽出」・「キーと値の抽出」のいずれかを選択します。
- 結果画面には、抽出されたテキスト・表構造・キーと値のペアが、それぞれ信頼度スコアとともに表示されます。
4-3. 同期API(AnalyzeDocument)での実践
DUには、同期API(AnalyzeDocument)と非同期API(ProcessorJob)の2種類があります。まず同期APIから実践します。
OCI公式のLimitsドキュメント(docs.oracle.com、2026年8月10日確認)によれば、同期APIは1リクエストあたり5ページ以下、最大ファイルサイズ8MBという制限があります。低レイテンシが求められる用途(検索、PHI等の機微情報を扱う場合)に向いています。
oci ai-document analyze-document-result analyze-document \
--generate-param-json-input document > document.json
oci ai-document analyze-document-result analyze-document \
--generate-param-json-input features > features.json
document.jsonには対象の日本語帳票(インラインのBase64データ、またはObject Storage参照)を、features.jsonにはTEXT_EXTRACTION(OCR)・TABLE_EXTRACTION(表抽出)・KEY_VALUE_EXTRACTION(Key Value抽出)のうち必要なfeatureTypeを指定します。編集後、次のコマンドで実行します。
oci ai-document analyze-document-result analyze-document \
--document file://document.json \
--features file://features.json \
--compartment-id <あなたのコンパートメントOCID>
4-4. 非同期API(ProcessorJob)とObject Storage要件
同期APIは5ページ以下という制限があるため、複数ページの帳票や大量のドキュメントをまとめて処理したい場合は、非同期API(CreateProcessorJob/GetProcessorJob/CancelProcessorJob)を使います。非同期APIは、入力・出力ともOCI Object Storageのバケットを介する設計になっており、1文書あたり最大2,000ページ、1ジョブあたり最大2,000文書(またはリクエストボディ500KB以下)まで処理できます。
- 同期(AnalyzeDocument): 1リクエスト5ページ以下・最大8MB・低レイテンシ用途(検索、機微情報の即時処理)
- 非同期(ProcessorJob): Object Storageへの入出力が前提・1文書最大2,000ページ・1ジョブ最大2,000文書・大量バッチ処理向け
- 非同期の最大ファイルサイズはObject Storage入力時500MB、インライン入力時8MB
非同期APIを使う場合、事前にOCI Object Storageのバケットを2つ(入力用・出力用)用意しておく必要があります。CLIではoci ai-document processor-job create-processor-job-object-storage-locationsコマンドを使います。
oci ai-document processor-job create-processor-job-object-storage-locations \
--compartment-id <あなたのコンパートメントOCID> \
--input-location-object-locations file://input-location-object-locations.json \
--output-location file://output-location.json \
--processor-config file://processor-config.json
input-location-object-locations.jsonには入力バケット内の対象オブジェクト一覧、output-location.jsonには結果を書き出す出力バケット、processor-config.jsonにはOCR・表抽出・Key Value抽出等の処理内容を指定します。ジョブ作成後は非同期で処理が進み、GetProcessorJobで進捗と結果の格納先を確認します。
本記事のハンズオン規模(サンプル帳票数件)であれば同期APIで十分ですが、実運用で大量の帳票をバッチ処理する場合は、この非同期APIとObject Storageの組み合わせが基本形になります。
4-5. 結果の確認と無料枠の消費量
同期・非同期いずれの方法でも、処理したページ数(またはドキュメント数)に応じてトランザクションが消費されます。本章のハンズオン(OCR・表抽出・Key Value抽出をそれぞれ数件ずつ)であれば、消費するトランザクション数は数十件程度にとどまり、月次無料枠5,000トランザクションには遠く及びません。ただし、§2-2で警告した通り、Document Extraction(表・KV抽出)を無料枠超過後も繰り返し試すと、超過単価$10/1,000トランザクションが他のAPIより高く効いてくる点には注意してください。
5. Languageと三者使い分けの実践整理
本章では、OCI Languageの主要APIを概観し、感情分析・エンティティ抽出を最小構成で試したあと、§1-3で示したAI基盤3部作の使い分けを実践的に整理します。
5-1. Language主要API概観
OCI Languageは、自然文テキストを対象に次のような事前学習済みAPIを提供しています。
| API | 機能 | AWS対応 |
|---|---|---|
| DetectLanguageSentiments | 感情分析(文単位・アスペクト単位) | Comprehend DetectSentiment |
| DetectLanguageEntities | エンティティ抽出(人名・組織名・日付等) | Comprehend DetectEntities |
| DetectLanguageKeyPhrases | キーフレーズ抽出 | Comprehend DetectKeyPhrases |
| DetectDominantLanguage | 言語検出 | Comprehend DetectDominantLanguage |
| DetectPiiEntities | PII(個人識別情報)検出 | Comprehend DetectPiiEntities |
| TextTranslation | テキスト翻訳 | Amazon Translate |
5-2. 感情分析・エンティティ抽出の最小実践
CLIでは、バッチ単位でテキストを渡すoci ai language batch-detect-sentiments・oci ai language batch-detect-entitiesコマンドが使えます(1バッチ最大100件、1件最大5,000文字、リクエスト全体で最大20,000文字)。
oci ai language batch-detect-sentiments --generate-param-json-input documents > documents.json
oci ai language batch-detect-sentiments --documents file://documents.json --level SENTENCE
documents.jsonには、分析対象のテキストと一意なIDのペアを複数件配列で指定します。--levelオプションにはASPECT(アスペクト単位)またはSENTENCE(文単位)を指定できます。同様に、エンティティ抽出は次のコマンドで実行します。
oci ai language batch-detect-entities --documents file://documents.json
結果には、検出されたエンティティの種類(人名・組織名・日付・場所等)と信頼度スコアが含まれます。§4で扱ったDUのKey Value抽出が「文書の決まった欄に何が書かれているか」を抽出するのに対し、Languageのエンティティ抽出は「自由記述の文章の中から固有表現を見つけ出す」点で役割が異なります。
5-3. GenAI/DS/AI Servicesの選定フロー
§1-3の決定表を踏まえ、実務で3つの選択肢のどれを使うべきか迷ったときの判断フローを整理します。
- 自然文での対話・要約・自由記述の生成が必要 → 「生成する」(Generative AI実践Vol1)
- 独自の分類基準・独自データで学習したモデルを自前でホスティングしたい → 「自分で作る」(Data Science実践)
- 画像分類・OCR・帳票構造化・感情分析等、既製のタスクを素早く呼び出したい → 「学習済みを呼ぶ」(本記事のAI Services)
- 本記事のAPIをベースに、より高精度な独自モデルが欲しくなった → DU/Vision/LanguageのCustom Trainingで拡張するか、Data Scienceへ移行を検討
この選定フローは一方通行ではなく、まずAI Servicesの事前学習済みモデルで要件を満たせるか試し、精度が不足する場合にのみCustom TrainingやData Scienceへ発展させる、という段階的なアプローチが現実的です。無料枠5,000トランザクション/月というAI Servicesの特徴は、この「まず試す」段階のコストを大きく下げてくれます。
6. まとめ・落とし穴チェックリスト
本記事では、「OCI Generative AI実践Vol1」「OCI Data Science実践」に続くAI基盤3部作の最終章として、OCI Vision・Document Understanding・Languageの3サービスを、AWSのRekognition・Textract・Comprehendと対比しながら実践しました。
| 記事 | 一言でいうと |
|---|---|
| Generative AI実践Vol1 | 生成する — マネージドLLM APIの呼び出し(大阪限定) |
| Data Science実践 | 自分で作る — 独自モデルのノートブック学習〜デプロイ(東京・大阪ともGA) |
| 本記事(AI Services実践) | 学習済みを呼ぶ — 事前学習済みタスク特化API(月次5,000トランザクション無料) |
最後に、実務で本記事のサービスを使う際に見落としやすい4つの落とし穴をチェックリストとして整理します。
- ①無料枠の計上単位: 無料枠5,000トランザクション/月はテナンシ単位で計上されます。同一テナンシ内の複数プロジェクト・複数担当者が呼び出すと、無料枠は合算で消費されます
- ②DU Document Extraction超過クリフ: 超過単価$10/1,000トランザクション(カスタムモデルは$30/1,000トランザクション)は他のAPIの4〜40倍です。無料枠超過が見込まれる場合は優先的に監視してください
- ③DU Custom Generative Models大阪限定: DUの基本機能(OCR・表抽出・KV抽出)は東京・大阪ともGAですが、生成系カスタムモデルのみ大阪を含む4リージョン限定で、東京は対象外です
- ④Vision/DUの使い分け混同: Visionは画像全般の汎用OCR、DUはビジネス文書の構造化(表・KV抽出)に特化しています。単純なテキスト化だけならVision、文書の構造まで必要ならDUを選んでください
これで、OCIのAI関連サービス(生成する・自分で作る・学習済みを呼ぶ)の全体像が出揃いました。要件に応じて3記事を使い分け、無料枠を活用しながら安全にコストを見積もりつつ、OCIでのAI実践を進めていただければと思います。